E.G.Qがあってそれそれがある・・・・

E.G.Qのお話を伺いたいんですが、結成のいきさつというのは?

 西畑 (勝) 君を中心としてみんなが友達関係だったんです。
よくギター・メーカーのクリニックなどでも一緒になったりしてました。以前ヤマハのDGアンプのポロモーションCDを作るっていう話が来て、"いつも集まってる4人でやったら面白いんじゃないか"ということになってレコーディングしました。それが元で西畑君を発起人としてバンドを始めたんです。最初"大丈夫かなぁ?"って心配しましたけどね・・・この我ままな4人のギタリストが弾き倒したら、インスト・バンドとしてまとまらないんじゃないかって。でもいざやってみたら4人とも楽曲の整理の仕方が今のJポップとかとあまり変わらないくらいだったんです。フリーな小節だけど、ジャズみたいに「もう1回まわして」っていうようなのはないんです。それにこれだけテクニックのある奴が集まれば、高速でハモるようなことだって可能だし。

ギタリスト4人でバンド組んで、改めて自分のスタイルが分かってきたのではないですか?

 たぶん僕が1番誰とも交わるギター・スタイルなんですよ。栗原 (務) 君のようにホールズ・ワースも大好きだし、堀沢 (俊樹) 君のようなマイケル・リー・ファーキンスだとかも研究したし、西畑君のようにゲイリー・ムーアだとかジョー・サトリアーニだとかもね。それは、東京に出てくる時に"本物のミュージシャンは、どんなギター・スタイルでも弾けるんだ"って思っていたことがあって、カントリー、ジャズ、ロック、ブルースを全部やってたんです。

勉強してから東京に行くと?

 そう。で、東京に来た当時そんなギタリストいなかったけど(笑)。まぁ今でもいろんなギタリストを研究してますよ。

通常だと一人のギタリストを他のパートのメンバーがサポートする形になると思うんですが、
E.G.Qは全員がフロントマンですよね。


 その辺も整理の仕方に秘訣があるんですけど、その曲を書いた人間が、リーダーシップを取って決めるんですよ。
それぞれの譜面を書いて。

収録曲のバランスは?

 僕は1枚目では1曲しか書いていないです。だって最初にレコーディングしてる時は、バンドだって知らなくて、クラウンの企画物か何かだと思っていたくらいですから(笑)。で終わって「次、いつ空いてる?」って訊かれて、「えっ、これ一体なんのアルバムなの?」って西畑君に訊いたら「我々のバンドのアルバムだよ」って言われて(笑)。それまで東京で本当にバンドらしい経験はなかったんですよ。だからこんなにキャリアが長いのにバンドは初めてですね。

E.G.Qは通常のバンド形式とも違いますよね。

 そうですね。でも続きそうですよ。

正直言って1stアルバムを聴いた時には、続かないんじゃないかと思ってたんですけど(笑)。

 みんなそう思ってたみたいね。僕らもそうかもしれないし(笑)。逆に今は、このバンドが母体にあってそれぞれの活動があるんですよ。去年ソロ・ライブをやったんですけど、E.G.Qがあって初めてやれたんじゃないかなって思います。

ライブもメンバーごとにキャラが違うから面白いですよ。

 堀沢君と西畑君はロック班で、僕と栗原君はジャズ班、って言われてるんですよ(笑)。
なぜなら本物の4ビートを使わないから。

高速の細かいフレーズまできっちりユニゾンで弾くあたり、かなり難しいんでしょ?

 特に堀沢君の譜面が細かいんですよ。
何音のアーミングだとか、何フレットでどの指から弾くかっていうことまで全部書いてあるの。

嫌だね〜それ(笑)。譜面にも性格が出そうですね。

 それは堀沢君ならではですね。僕は"この人ならこう弾くだろう"とか狙ってるんですけどね。いつもリハーサルの時に曲を書いた人がそれぞれのパートを指名するんですけど、「じゃあこれは誰に弾いてもらおうかなぁ〜」って言うと、みんな下向いちゃうの(笑)。

(笑) あんなにテクニカルな曲なのに、譜面を受け取ってすぐに弾けるものですか?
 
 やっぱり休みをとって一人でスタジオ入って個人練習したこともありますからね(笑)。
でっかい音出さないと分からないものがありますから。

なるほど。ではソロ・ギタリストとしての今後の展望は?

 元々好きなのはブルースなんですけど、特にアメリカのブルースに憧れてイギリス人がやっていたようなスタイルのブルースが好きなんですよ。クラプトンとかベックとか。それを日本人がやるっていうのはどうかなって思ってるんです。自分としてのブルースのスタンダードみたなものを書いてみたいし。やりたいことはいっぱいあるんです。それから、とにかくストラト大好きなのでもっと音色について追求したり、オールド・マーシャルとストラト使って2000年時代のスタンダードになりうるギター・サウンドを作りたいって思ってるんですよ。それと今年は4ビートのジャズライヴをやりたいとも思ってるし。


フェンダーなのにギブソンみたい。


これだけ持っていてもまだ欲しいギターってあるんですか?

 そうね、ロカビリーサウンドみたいなのをやるのに、グレッチが欲しいですね。ブライアン・セッツアー・オーケストラとかかっこ良いじゃないですか。それと奥行きのあるリバーブ・サウンドのシャドウズを混ぜたようなのをやってみたいなって。音のクリーンさではかなり近いと思うんですよね。やってる音楽が違うだけで。

最後にストラトキャスターの法田さんモデルについてお伺いしたいんですが。これを作ることになったいきさつは?

 元々はE.G.Qを聴きに来てくれるオーディエンスから始まってるんですけど、よく「フェンダーなのにギブソンみたいな音に聞えた」って言われるんですよ。実はメインのストラトはアッセンブリをアレンジしてあって、ハムバッカーっぽいサウンドが出るようにしているんです。リアにトーンをプラスしてさらにトーンを5とかに下げたままプリセット出来るようにしてあります。そしてセンターフロントは単独のトーンになっています。で、この二つが真ん中のトーンになるんです。だからフロントで弾いた時はストラト・サウンドなのに、リアにした時にはハムバッカーのような太い音が出るんですよ。西畑君に聞いたら「エリック・ジョンソンもそうやってるんだよ」って言ってました。でもこれは最近やったわけではなくて、もう神戸時代からですけどね。最初はリアにトーン・ポットが咬んでないから音がカリンカリンで使いづらかったんでやってみたら、すごい良かったんです。それから僕は弦高が低いのでストラトのように指板にRが付いているとチョーキングの時に音が詰まりやすいんですよ。だからなめらかなチョーキングをするために、自分で指板を削ってフラットにしてあるんです。

指板のRでそんなに違います?

 違いますよ。それに多少なんですけど音もギブソンに近づくと思います。フレットの形状も山が高いよりやや低い方がミッド・レンジが出やすいし。更に言うと、フレットの材質も固くないほうがミッド・レンジが豊かですきなんですよ。一番こだわっているのはその辺ですね。後ヴォリュームに付いているキャパシターも通常に使われているやつよりは値の小さなものにしています、トーンのあまりないタイプですね。いくつか試してみて一番良かったものを採用したんです。デットポイントがないというのが僕が一番欲しかったストラトなんですよ。フラット指板だとワイド・ストレッチのコードを弾くときにも有利ですからね。このモデルはイシバシ楽器と共同で1年半かけてようやく完成したんです。

フェンダー・カスタムショップで作ったものではないんですね?

 ええ、イシバシがヴィンテージ・モデルを独自に日本でアレンジして、1本1本作ってるんです。
イシバシの企画なんですよ。

フラットの指板はどうしてるんですか?

 フレットを全部抜いて指板を削ってるんです。要するにリペアみたいなもんですよ。細かい仕様を全部僕のほうで指示して、そのとうりにモディファイしてあります。

そうする事によって音はどのように変わりました?

 やっぱりミッド・レンジが良く出るようになりましたね。

それは60年代のストラト・サウンドとも違うものですか?

 違いますね。弾いてもらえばすぐに分かると思うんだけど、
ヴィンテージっぽい太めのサウンドでしかもすごい弾きやすいですね。

ストラトが出来たのは54年、レスポールが52年だというのに、
未だに当時のものが良いっていうのは面白いですよね。


 それってバイオリンがすごいんでしょうけどね。良い音っていうのはそんなに種類があるもんじゃないって気がするんですよ。それ以外のものっていうのはなかなかスタンダードになり得ない。今僕の改造したストラトは、そういった意味ではスタンダードになりえるじゃないかと思ってるんです。日本のプロ・ギタリストってひとつのジャンルだけで仕事が終わることがほとんどないんですよね。僕みたいな生き方をしていると時にはフォーク系、時にはパンク系、ハード・ロック・・・って考えると、こういうストラトのようなサウンドが必要になってくると思うんです。

浜田省吾を始め、来生たかお、鈴木雅之、財津和夫、徳永英明、ラッツ&スター、ジョニー大倉、須藤 薫、小山卓二など数多くのアーティストのコンサート・ツアー、レコーディングをサポート。ポップ系サウンドにもうまくマッチするようにアレンジされたドライブ感のあるギター・スタイルは、ポップス界に新鮮な風を吹き込んだ。その他、映画やゲームのサウンドトラック制作、CM音楽制作、各音楽オーディション/コンテストの審査員など、幅広い音楽活動を行う。98年、テクニカルなギター・スタイルで知られる4人のギタリスト(西畑 勝、 栗原 務、 堀沢俊樹、 法田)によるロック・ギター・ユニット、E.G.Q.結成。同年9月にリリースされた1stアルバム『エレクトリック・ギター・カルテット』、更に2000年にリリースされた2ndは、新しいスタイルのギター・インスト・ミュージックとして注目されている。1月25日、法田勇虫/清水一雄(ブルースアレー)。3月2日、E.G.Q(スターパインズカフェ)のライブが予定されている。先日発売された浜田省吾のベスト・アルバムでも、法田のギターが堪能できる。

法田勇虫
(ほうだ いさむ)
兵庫県出身


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